どうしてフィギュアスケートが好きなのか。

動画で、デニス・テン選手(カザフスタン)の2009年世界選手権の演技を見た。
当時弱冠15歳ながら、フリープログラムを完璧に滑って総合順位8位に食い込み、話題になっていた彼。


youtubeの小さな画面なのに、観ていて泣きそうになってしまった。


この世界的には無名の小さな男の子が見せる洗練された演技に驚き、興奮する観客。
最後のステップでは会場一体となった拍手が送られる。
ラストのポーズをとり終えるやいなや、茫然自失といった風情で頭を抱え込むテン。
観客からは賞賛の嵐。


フィギュアの試合で、ミスの無い完璧な演技が見られることはそうそう無い。
それは世界トップクラスの選手であっても。
むしろ、上位を狙うような選手は難度の高い大技を組み込んできているので、失敗のリスクは誰よりも高いかもしれない。


試合で結果を出すために大変な努力をしているのに、100%の出来で演技を終えることが滅多にない。
フィギュアスケートというのは、他競技と比べてもフラストレーションの溜まりやすい競技なのかもしれない。
別問題だが、二転三転している採点方法にも、選手観客双方から批判の声が多い。



それでも多くの人を惹きつけるフィギュアの魅力。
完璧な演技という、思いもかけない奇跡のような瞬間に立ち会える感動。
そのために様々なものを捧げてきた競技者が達成感に打ち震える姿を見られる喜び。
素晴らしい演技には演技中から拍手が沸き起こり、国籍や年齢を超えて人々の気持ちが一つになる。



2008年グランプリファイナルの男子シングル・アボット(米)の優勝の時も同じ感慨を覚えた。
実力はトップクラスと言われながら、メンタルの弱さのせいか本番で100%の力を発揮できずにいた彼が見せた完璧なフリープログラム。


こんな瞬間があるから、フィギュアファンは止められない。